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海外ドラマのがん患者(1) [ぐだぐだ]


2015年9月9日(水)

私、かれこれ30年近く字幕翻訳者をやっています。

このブログでは今まで「徹夜した」とか「忙しかった」とか、そんなことしか

仕事のことには触れてきませんでしたが、今回はちょっと… 



というのも、今まさに訳している最中のドラマで、がんを宣告された実習医が

治療を拒否して「好きなことやってパッと散りたい!」みたいなことを言うシーンがあり

いろいろ考えてしまったのです。



ドラマというのは、どんなに“日常を描く”とかうたっていても、

そこはエンターテインメントなので、何かしら盛り上げなければなりませんから、

惚れた腫れた切った張った、が強調されます。

“がん告知”とか“抗がん剤治療”とかは、万国共通で『大変だ~[あせあせ(飛び散る汗)]』と

認識されるネタですから、制作側としてはとっても使いやすい(?)モチーフです。

 


現に、私がここ数年ずっと手がけている2つのドラマシリーズにも

ちょいちょいがん患者が出てきます。

今日は、その中からいくつかエピソードをご紹介しようと思います。





中身が長くなりそうなので2回に分けます。 





[病院] まずは、いろいろ考えるきっかけとなった今作業中のドラマ① 中のエピソードです。

若い女医さんががんを告知され(それも生存率2%という段階で)、家族の説得も聞かず

治療を拒否して… という設定。



無治療を選ぶのはいい。本人の意思が尊重されるべきです。

しかも彼女は実習医で専門的知識も持っていて、そのうえでの判断ですし。

ただ、 その判断に至る前に、「私は患者を大勢見てきた。みんなpoison(抗がん剤のこと)を

体内に入れられて苦しんで死ぬのよ!」 とかいうセリフを吐く。

それが引っかかるぅぅぅ (ーー;)




そりゃドラマだから、彼女が常識を外れた行動を起こすきっかけとして

病気の宣告はちょうどいいんでしょうけど 

あのー、あなたが見てきた患者さんたち、治療のときは苦しんだだろうけど

ほとんどが、そこそこ健康を取り戻し、まあまあ普通の生活に戻ってるはずですよね?

と、患者経験者としてはツッコミを入れざるを得ませんでした。 

あと、苦しむ患者を見て、絶望と憐れみしか感じなかったとしたら

そりゃ医者としてというより人間としていかがなものか、とも思っちゃう。

今どきの患者、哀れなだけなんてこと絶対にないし、

命をかけた闘いを見れば、誰でも多かれ少なかれ敬意を抱かずにはおれないはずだもの。

ドラマの展開で必要なヤケクソ発言だったとしても、

どうもね、納得できませんでした。



前にも映画の感想の記事で書きましたが、ドラマや映画では“がんの告知”の扱いが

安直というか、画一的すぎる気がします。

がんを告知されたら、 そりゃショックだし自分の来し方行く末をどどーん、と考えたりするものだけど

そんな大げさに盛り上げてどうすんのよ、と私は思う。 

がんになる人は多いんだから、もう、そういうのやめようよって思うんです。

 

まあ、告知されたとき、自分でも驚くほどショックでも何でもなく

冷静だった私だから、そう感じるのかもしれません。

不思議なんですが、本当に、平然としてた。

予感があったのもあるし、

「でも絶対悪くはならない」という根拠のない自信もあったんです。

もちろん、あとでジワジワ落ち込んだりはしました。

手術後の検体検査結果で化学療法が必要、と言われたときは

さすがに軽くうろたえましたしね。化学療法への恐怖はあったんです。

 

そんな恐怖をあおるように、ドラマも描いていたりします。


[病院] 私が担当しているもう1つのシリーズ、1年のうち8か月を拘束されているドラマ②には、

こんなエピソードがありました。

 

 

 


詳しい状況は省きますが、自分の病状が進行しているのに、

さも回復しているかのように騙されていたと知った患者が

そのトンチキ医者を誘拐するのですが、その医者に与える拷問(!)が、

なんとなんと、『抗がん剤の点滴』だったのです。



…これ、いろんな意味でひどいよねー。



まず、現実を知って絶望するほどに病状の進んだがん患者に、

健康な男性医師を1人拉致して拘束、人気のない場所に閉じ込める、なんてことを

実行できるだけの体力があるのか、という極めて素朴な疑問。


そして、いったい誰が静脈に針を刺したの?というリアルなツッコミ。

私たちは知ってます、針を刺すのって、医者でも失敗するんです。

なんで素人がいきなり成功する? 


さらに一番問題なのは、これじゃ、抗がん剤を注入されたら死ぬ、もしくは

死ぬほどひどい目に遭う、と言ってるのも同然、ということ。

 


もともと、アクションが売りの捜査もので、現実の法律とか捜査技術とかを

いつも相当 都合よくねじ曲げてるドラマなんだけど、この回はあまりのことに

(少なくとも患者経験者の私は)思わず笑っちゃった。

 

でも、特に問題になったとは聞かないから、アメリカでも日本でも、視聴者は

気にすることなくご覧になったんだと思います。

でもね、そんなドラマのせいで、化学療法への恐怖心、不安を抱かされるんですよねー。。。

 

<つづく> 

 

 

 


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コメント 4

KEY

ども、お久しぶりです。
丹毒なんて病気で自宅療養中のものです(笑)。

ドラマそのものを観ていないので記事を読んだ範囲の感想ですけど、
たしかに突っ込みどころ満載ですね。
最近の海外ドラマって過激さが売りみたいになっているので、
観る方も「フィクション」とわかっていないと。

抗がん剤治療をしていない私が言うのもなんですけど、
最近抗がん剤治療をしない方が延命できるみたいな話、
日本でもけっこう持ち上がっていますよね。
抗生物質のものすごく強いのと同じで、
悪性も良性も関係なく身体の細胞を痛めつけてしまうので、
そもそもの体力がないと耐えられないし、
基本的には苦痛を伴うから衰弱しやすい。
抵抗力免疫力が落ちるから再発転移しやすくなるんじゃないかと言う話。
それと日本は某国製薬会社の治験状態にあるといううわさ。
抗がん剤治療が病院と製薬会社のドル箱であるという事実。
アメリカの保険制度だと、
ガン治療はかなり高額な治療に入るんでしょうし、
デフォルメされたドラマとはいえ、
ぱふさんが納得できない台詞や展開になるのも、
まぁそれなりに仕方がないのかなぁとも。

医療の常識もどんどん変わるし、
同じ治療をしても人によって結果も違うし、
現実的には昔と違ってガンも致命的な病気とは言いがたくなっている。
そんな中でそのドラマ、
確かにいろんな意味で誤解を与えるし、
真に受けるとまずいこと満載ですねー。
でもまぁある意味抗がん剤治療に疑問を投げかけていると、
解釈できないこともないとも思えます。

しかし点滴に関しては苦笑です。
私も子宮全摘の時は、
もう針を刺すところがなくなって、
手首や手の甲から点滴していましたからね。
またこれが医者の点滴の針刺しがへたくそで(笑)。
経験者なら誰でも笑っちゃいますね。

と言うことで、
後編を楽しみにしています(笑)。

by KEY (2015-09-10 06:13) 

ぱふ

★KEYさん、ありがとうございます!

 お久しぶり(^_^)/ 丹毒って… ググってみたら、
 子宮がんサバイバーが注意せねばならないという
 蜂窩織炎に似た病気なんですね。どっちにしても、漢字の印象が
 怖すぎる… どうぞお大事に。

 「抗がん剤は悪だ」とか「がん治療なんかするな」とかいう論、
 議論の投げかけとしては意義もあるのかもしれませんが
 実際に病名を宣告された患者にとって、迷いや疑い、恐怖を
 いたずらに大きくさせるものでもあります。
 テレビで聞いただけ、雑誌の特集記事で見かけただけで信じ込み
 治療を断ってしまったら、寿命を縮めることになりかねません。
 患者も自分で文字通りに一生懸命研究して、決断を下すべきですが
 だからこそ、バラエティーやドラマで、適当に取り上げるのは
 やめてほしいとも思うのです。
 闘病ドラマで経緯をじっくり描くなら別ですが、単なる物語の転換点とか
 お涙ちょうだい演出で使わないでほしい。
 そんなことを考えているので、自分が訳してセリフを作りながら
 ドラマに違和感バリバリになってしまうんですねえ。。

by ぱふ (2015-09-10 09:35) 

やっぴー

こんにちは!

ぱふさんが、どんなドラマの翻訳をされてるんだろう…ってすごく気になったりする(*^_^*)

それはさておき、確かに、病気、特にがんの取り上げ方は、経験者から見ると、違和感のあるものが多いですね。
拷問に抗がん剤??
それは、酷過ぎる(◎_◎;)
猛毒として(まあ使い方によっちゃあ、そうなるんでしょうが)扱ってるんだ…。
日本のドラマでは、そこまで極端なのはありませんよねえ。
でも、日本のドラマでも、必ずと言っていいほど主人公が死んでしまうお話ですよね。
実話に基づいてるのが多いのに、本人が元気になるっちゅうのは、ドラマにならんのかい!と思うことあります。

もっとサラッと「ええ、ちょっとがんになりまして。」頭ポリポリ…みたいな風に喋りたいと、常々思ってます。

by やっぴー (2015-09-10 17:33) 

ぱふ

★やっぴーさん、ありがとうございます!

 私の名前でググるといくつか作品が出てくるかもよ~(^_^)ゞ

 ほんと、がんで休んでたけど職場復帰して活躍するヒーローや
 ヒロインがいればいいですよね。現実では、そんな人もたくさんいるもの。

by ぱふ (2015-09-10 20:13) 

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